ビオトープとは、「地域の野生の生きものが暮らす場所」を意味します。
野生の生きものが生活する場所「ビオトープ」には、実にさまざまなタイプがあります。
人工的に造った池などといった特別なものを指すのではなく、私たちの身近にある森林や草地、 河川や河原、池や湖沼、海や干潟など、その地域にもともといる野生の生きものたちがくらしたり利用したりする、 ある程度まとまった場所がビオトープです。
ビオトープのタイプが異なれば、そこにすんだり利用したりする生きものの種類が違ってきます。また、地理的に南北に長く、 海岸に近いゼロメートル地帯から数千メートル級の高い山まであるわが国では、同じように見える川は川、 山は山でも、地方によって様子が微妙に異なります。言い換えるならば、全く同じビオトープはふたつと無いのであって、
それらビオトープに根付く自然のしくみ「自然生態系」は、ほとんど取り替えがきかないのです。
生物多様性の保全には、すなわちさまざまな種類の生きものが生きていく必要があり、それぞれの地域がもともともっている 多種多様なビオトープが必要です。
ところがこれまでは、世界中のどこの国でも現代の世代の都合だけで国づくりやまちづくりが行われ、 ビオトープが次々に壊されてきました。もちろんわが国も例外ではなく、大戦後の復興期や高度経済成長期、 バブル経済などの時期に、人間中心、特に大人にとって都合の良いまちづくりが優先され、ビオトープがどんどん壊されてきました。
環境の時代とも言われる21世紀においては、残されている健全なビオトープを可能な限り守り、 失われたビオトープを積極的に回復させていくことが必要です。また、ビオトープはポツポツと島のように残すのではなく、 互いにネットワークさせて、生きものたちが自分で移動できることが大切です。
一人ひとりが身近なビオトープを守ることは、地球全体の自然を守ることにつながるのです。
※「ビオトープ」は、ドイツ語では「BIOTOP」、英語では語尾にEが付いて 「BIOTOPE」と標記されます。
出典:公益財団法人 日本生態系協会